仙台市医師会報2008.5 No.527より

たばこ問答

たばこの害については今や論を待たない。

とりわけ、将来ある子供たちには初めから喫煙習慣を身につけて欲しくないので、小中学生を対象にした「防煙教育」が授業にも取り入れられている。

私もそのお手伝いで教室を訪れることがあるが、子供達は真剣なまな差しで話を聞いてくれる。一通り話が済むと質問タイムになるのだが、待ってましたとばかり、あちらこちらから手が挙がるのは嬉しいことだ。

中には、日ごろから親の喫煙する姿を見て秘かに心配している子供もいて「どうしたらお父さんにたばこをやめてもらえるだろうか」という質問もある。

しかし、なんといっても多いのは「たばこを最初に吸った(発明した)のは誰か」という質問である。毎度のことなので私の想定問答集にも一応答えはある。

南米ボリビアからアルゼンチンにかけてのアンデス山脈周辺に野生たばこの起源があることから、たばこは古代文明の宗教儀式にかかわりを持ちながらインディオの間で吸われてきたと推測され、それがコロンブスのアメリカ大陸発見を機にヨーロッパに伝わり、瞬く間に世界中に広まったというのが通説である。

しかし、それでも子供たちは納得しない。「でも、最初にたばこに火を点けたのはどうして」といって食い下がる。それに対しては「山火事か何かのとき、たばこの葉の燃える香りを偶然嗅いだのかもしれない」と答える。

これは私の思いつきばかりでなく、ものの本に書いてあった話だ。もう一つ必ず出る質問に「なぜ体に悪いたばこを売っているのか」というのがある。こんな素朴な、しかし真っ当な問いかけには、大人として答えに窮してしまう。

佐藤 研