第440回市民医学講座:糖尿病診療

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NTT東日本東北病院

副院長 関口 幸雄 先生

と き:平成21年11月19日(木)午後1時30分

ところ:仙台市医師会・仙台市急患センター

     2階ホール

 

 

 

糖尿病診療-かかりつけ医と病院連携の必要性-

本日は糖尿病にかかったときに、近所のかかりつけ医と病院をどのように使用したらよいか、どのように使い分けたらよいかのお話をさせていただきます。

かかりつけ医には、手軽で通いやすいということがあり、病院には専門医がおり、糖尿病教室が行われたりして、専門的知識と専門的治療を受けられるということがあります。結論から言いますと、かかりつけ医と病院の特徴をよく知って両方を上手に使い分けることがよいと思っております。また、病院と医院は患者さんのスムーズな行き来ができるようにしてあげなければなりません。

本日はまず、糖尿病の基礎的なお話をさせていただき、次にかかりつけ医の担う特徴、および病院の特徴を話させていただきます。そして最後に、医院と病院の連携はどうあるべきかを話させていただきます。

まず初めに、糖尿病の基本的知識を述べさせていただきます。糖尿病というのは、血中の糖分をコントロールする膵臓から分泌されるインシュリンというホルモンが足りなくなるためにおきます。

しかし、糖尿病の厄介な点はなかなか症状が出にくく、かなり進行しないと症状が出ないということであります。糖尿病は早期診断、早期治療が大切である点を考えますと、症状が出ないうちに発見することが大事であります。糖尿病になりますと、多飲多食、多尿などの症状が出現して、眼障害、神経障害、血管障害、腎障
害などが出現して、進行しますと失明したり、腎不全で透析を受けなければならなくなります。

幸い糖尿病の診断は簡単な血液検査でわかり、検診などにも取り入れられておりまして、最近は容易に診断が可能です。不幸にして糖尿病になってしまったらですね、糖尿病の治療は糖の代謝能力が低下するということですから、第一は食事療法、摂取カロリーの制限となります。食事療法が基本となります。さらに程度が進みますと、医者にかかって薬を飲んだりインシュリンの注射をしなければならなくなります。

糖尿病による神経症、眼症、腎症、血管障害などの合併症がおこらないようにするには、何といっても早い時期に糖尿病の治療をすることが大切であります。かかりつけ医は手軽で簡単に受診できてしまうというのがメリットです。 これに対して、病院のメリットはどうかといいますと当院の糖尿病の連携のご案内ですが、軽
症から重症まで、そのレベルに応じてどのレベルでも、糖尿病の教育を受けられることには意味があります。図表に対応基準を示しました。


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図1

糖尿病治療の転機となるインシュリンへの導入、経口剤の見直しなどの転機などのときにはもちろんですが、各レベルそれぞれにおいての対応が示されております。血糖が200mg/dl以上の状態が続きますと、のどが渇く、水分を多くとる、疲れやすい、おしっこがたくさん出るなどの症状が出てきます。怖いのは、体の神経
障害、腎障害、網膜症による眼障害をおこしてくること、また、動脈硬化も進みやすくなり血管障害をおこしやすくなって、脳梗塞、心筋梗塞などをおこしやすくなってくることであります。透析は、糖尿病に起因する率が年々増加の一途をたどっております。

糖尿病のコントロールの優、良、可、不可は、空腹時血糖、食後2時間値血糖、1カ月間の血糖値とよく相関するといわれているHbA1cの値でなされます。空腹時血糖130未満、HbA1c 6.5未満なら良、空腹時血糖160以上、HbA1c 8.0以上なら不可ということになります。それで、糖尿病になったときの医者の利用の仕方ですが、かかりつけ医と病院をその特徴を知って、うまく利用するとよろしいかと考えます。

次に、糖尿病の合併症の病態について、もう少し、当病院で行っているそれに対する対応法について説明させていただきます。軽症の外来コースでは、栄養指導、眼科、糖尿病教室からはじまり、3日間入院して糖尿病の自己管理を体験して覚えてもらいながら合併症の検索をするものから、さらに進行した方には薬の使い方からインシュリンの選択による血糖コントロールなどの状態に対応したメニューが含まれております。

現実的には、薬物療法前の食事療法・運動療法のみの軽症の方は、糖尿病教室や合併症の検索を中心に、次のHbA1c 6.5%~8%の中等症の方は、薬剤の見直しやインシュリン導入を中心に、罹病期間が10年以上の方やHbA1c10%以
上の中等症〜重症の方に対しては、インシュリン使用による厳密な血糖コントロールを中心に行います。落ち着いたらかかりつけ医に行ってもらうという流れです。


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図2

また、国の方針としても医療供給体制もこれまでの一次、二次、三次体制の階層型の構造の医療提供体制から、患者の視点に立った医療連携体制への変換への方向が打ち出されております。

しかし具体的には、病院とかかりつけ医には図に示したように、どのような患者さんをどのように病院に送って返してもらうか難しい点があります。


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図3

糖尿病の連携の会を作ったりお互いの糖尿病のコントロールのパスを作ったり糖尿病手帳を共有したりして、病院と医院が垣根を低くして患者さんが両方に気軽に行きやすくすることによって、より良い糖尿病のコントロールが図れるようにすることが大切です。


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図4


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図5

みんなで協力して、糖尿病のコントロールを図りましょう。