第445回市民医学講座:人間ドック

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仙台オープン病院 健診センター

部長 武澤 良明 先生

と き:平成22年4月15日(木)午後1時30分

ところ:仙台市医師会・仙台市急患センター

     2階ホール

 

 

 

 

 

「人間ドック」あれこれ

*人間ドックって?
人間ドックは自覚症状の有無に関係なく定期的(年に一度くらい)に病院、診療所に行き、身体各部位の精密検査を受けて、普段気がつきにくい疾患や臓器の異常、健康度などをチェックする健康診断の一種です。データを元に医師の問診、診察を受け、生活習慣病の予防や治療、そのほかの健康問題について助言、指導を受けるもので、予防医学と位置づけられます。

*人間ドックの歴史
この種の短期入院健診は、日本では1954年(昭和29年)7月に国立東京第一病院(現・国立国際医療センター)で開始されたのが始まりでその後、聖路加病院が開始した。初めは「短期入院精密検査」と称されていたが、この検査について報道した読売新聞の記事において「人間ドック」というネーミングがされたことから、やがてこの呼び方が定着したといわれております。

*人間ドックの目的
一次予防:疾病の発生そのものを予防する

栄養バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスの解消など、健康的な生活習慣づくりのための助言、指導を行い、生活習慣病の発生そのものを予防すること。

二次予防:早期発見、早期治療

がん、脳卒中、心臓病などを早期に発見し、病気が進行しないうちに早期に治療すること。

*ドックの種類
最も一般的な人間ドックのほか、脳ドック、心臓ドック、肺ドック、レディースドック、アンチエイジングドック、遺伝子ドック、PET、歯科ドックなどさまざまなドックが行われています。

*人間ドックの意義や位置づけ
1)「疑わしきは罰する」が検査の基本姿勢である。

「早期発見を主眼としている」以上、診断医が少しでも気になった異常については、その病的な意義は別として、検査結果にその旨を記載することが多い。

2)経過を見ることで、検査の情報は倍増する。

がん検診や人間ドックは、いろいろなところで自由に受けることができますが、健診結果は、以前のものと比較することによってその情報は倍増します。

3)次なる行動につなげる。

何らかの異常がある場合には「医療機関を受診してください」や「○カ月後に再検査を受けてください」など指示に従って、次なる行動につなげることができる。

*検査判定の見方
1)基準値と正常値

人間ドックや健康診断を受けたり、あるいは外来や入院で検査を受けると、たくさんのデータが戻ってきます。レントゲン写真とか心電図など数字では測りきれない感覚的な判定に委ねられる情報を除くと、あとはいろいろな数値の山が残されます。皆さんは、健康=正常値、病気=異常値と簡単に考えていないでしょうか?
この言葉の使い方で、正常値という言い方は誤解を招きやすいので、現在では「基準値」、「参考値」という言い方がされるようになりました。健康な人100人の内95人が入る範囲、統計的に言えば平均±2SD(標準偏差)の範囲(全測定者の95.4%を含む)を基準範囲(従来のいわゆる「正常範囲」)と表現するわけですが、100人に5人は何ら異常がなくても基準範囲から外れてしまうことになります。従って最終的に異常であるかどうかは、医師による総合的な判断が必要となります。

2)基準値は変わる
ところがこの基準値にも違いがあることを忘れてはいけません。同じ検査項目でも、検査を行った施設々々で、その範囲が微妙に異なることがあります。すなわち、検査に使用した試薬、標準物質、測定装置などが検査データに影響を及ぼすことに原因があります。従って検査結果を見比べるときには、単に結果だけを比較するのでなく、基準値の違いにも注意が必要となります。現在、こうした病院施設間の検査データの違いを解消し、基準値の統一化を図る努力が行われております。日本人間ドック学会では、全国データを元に基準値を設定しており、一部
の医療機関では、その基準値が採用されております。なお、年齢、性別、人種などによっても基準値は変わりますが詳細は省略いたします。

*検査結果判定の表記
日本人間ドック学会の判定基準にのっとりA〜Eのアルファベットで記載されます。それぞれのアルファベットの意味する内容は、結果報告書に記載されておりますから参考にしてください。

*誤解されやすい用語
貧血、不整脈、嚢胞、ポリープ、など

*人間ドックのオプション検査
全大腸内視鏡検査、胸部CT検査、頸動脈超音波検査、心臓超音波検査、腫瘍マーカー、睡眠時酸素飽和度測定検査、骨密度測定検査、そのほか(肺年齢、血管年齢など)

*何を基準にして人間ドックを選んでいますか?
お勧めしたい人間ドック施設選びの基準
1)日本人間ドック学会の施設機能評価を受審し、認定を受けた施設
2)日本人間ドック学会認定医がいる施設(平成22年1月以降は人間ドック専門医制度がスタート)
3)画像診断にダブルチェックを採用する施設
4)検査実施後のフォローアップ体制の充実している施設
5)豊富な医療連携が行われている施設が望ましい。

*これからの人間ドックは?(テーラーメイド人間ドック健診)
人間ドック健診の役割は、その検査や診察を通しての”トータル ライフサポート” であり、診察医師は健診結果の蓄積と経過観察で、いわゆる”かかりつけ医” としての役割を担っていくことが必要である。その結果として、人間ドックの大きな目的であるがんの早期発見と、生活習慣から発症する脳、心血管病変を予防することである。特に、日本人の死亡原因の2位と3位が生活習慣に起因する動脈硬化からの脳血管疾患と心疾患で、合計すると1位のがんに匹敵するのが現状ですから、脳、心血管病変をいかに未然に防ぐか、そのためにどのような検査を
行うべきかが非常に重要となる訳です。きめ細かな問診と、蓄積された個人個人のデータ、オプション検査を組み合わせ、その個人個人に見合ったドック検査メニューを作ることができれば、毎回同じ検査を繰り返すよりは、一層効果的なドック健診になると考えます。これは大変困難な作業となりますが、いわゆる”テーラー
メイド健診” が理想と考えます。

人生という長い航海を快適に過ごされるために、ぜひ一年に一度は人間ドックを受診し、健康管理の指標にしていただきたいものです。