東北大学医学部整形外科講師
小澤 浩司 先生
とき:平成20年11月20日(木)午後1時30分
ところ:仙台市医師会・仙台市急患センター
2階ホール
腰の痛みは膝の痛みとならんで、整形外科を受診する患者の最も多い訴えです。生涯一度も腰痛を覚えず過ごす人はいないでしょう。先日放映されたNHKスペシャル「病の起源」で腰痛が特集されていました。アフリカの原住民のある部族には「腰痛」の概念がないそうです。彼らは狩猟のため毎日数10キロも歩きますが、腰痛という言葉を理解できません。腰痛は文明病といえるかもしれません。アフリカの原住民に腰痛がない原因の一つに、彼らの寿命が短いことがあります。腰痛は加齢と密接な関係があります。腰痛の発生に最も関与する椎間板は、加齢により次第に内部の水分を失って柔軟性を減らし高さが減少します。外側の線維輪と呼ばれる組織に亀裂が入ったり、膨隆していきます。また加齢により椎間板が弛むこともあります。この弛みにより上位椎体が前方にすべる変性性脊椎すべりが、中高年の女性によくみられます。男性では弛みを制動しようと椎体の上縁、下縁に骨棘が増生する脊椎症性変化がよくみられます。高齢者では脊椎内のカルシウムが減少し、骨梁が細くなり圧迫骨折を起こしやすくなる骨粗鬆症変化が生じます。特にエストロゲンが欠乏する閉経後の女性によく生じます。このような加齢に伴う脊椎の変化が腰痛に大きく関与します。