大橋眼科医院院長
東北大学医学部臨床教授
山口 克宏 先生
とき:平成21年4月16日(木)午後1時30分
ところ:仙台市医師会・仙台市急患センター
2階ホール
網膜の老化と病気―加齢黄斑変性―
1.網膜内では毎日「油かす」が作られ処理されている
目の老化現象として代表的なものに、老視、白内障、眼瞼下垂などがありますが、眼底網膜の中央にある黄斑にも老化現象が起こります。この物を見る要の部分に、異常な老化が生じ、視機能(視力や視野)が障害される病気は加齢黄斑変性と呼ばれます。網膜は、よくカメラのフィルムに例えられ、光を受け止め、電気的な信号に変換して、脳へ信号を伝えるという重要な役割を担っています。解剖学的には、最も外側に一層の網膜色素上皮細胞が存在し、視細胞外節と呼ばれる視細胞の突起と接しています。網膜の内層には双極細胞があり、さらに最内層には長い神経線維を有する神経節細胞があります。光粒子は、この網膜の内側を透過して、外層の視細胞外節に到達します。これは、コンパクトディスクのような円板状の膜様体が1,000枚ほど重なった構造をしています。そこに無数に存在する光受容蛋白が光を受け止め、エネルギーを電気的信号に変え、視神経を介して脳に視覚情報を送ります。視細胞外節では、毎日使い古された先端10%が変性脱落し、同時に新しい光受容蛋白を持った円板が内側に再生されています。この視細胞の新陳代謝のため脱落した外節は、脂肪性の老廃物の塊(油カス)のようなもので、網膜色素上皮細胞が貪食し、その細胞内で酵素により消化されています。
続きを読む →