第392回市民医学講座:糖尿病よもやま話

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東北大学分子代謝病態学分野糖尿病代謝科
講師 檜 尾 好 徳 先生

 

とき:平成17年11月17日 午後1時30分
ところ:仙台市急患センター・仙台市医師会館2階ホール

 

 

 

-老人性黄斑変性症を知る-

2002年の厚生労働省による糖尿病実態調査によりますと、 わが国の糖尿病人口は約740万人、 その予備軍も含めると約1,620万人、これはわが国の成人の約6人に1人と推定されますが、 その中で十数年後に各種慢性合併症に悩まされる患者さまが少なからず存在し、 その精神的、肉体的苦痛、 経済的損失は大きいものと思われます。

糖尿病の治療目標は、合併症に苦しむことなく健常者と変わりない生活を送って頂くことでありますから、合併症の発生と進行の阻止のためには血糖コントロールが何よりも優先されます。 一方、 「肥満」は糖尿病を筆頭に冠動脈疾患などの動脈硬化を進展させ、 生命予後を悪化させます。 人類の長い歴史は飢餓の時代が長く続きました。

血糖が下がりにくくカロリーが蓄積しやすい体質、 すなわち少ない食物でも生き延びられる体質が善玉体質として生存競争に有利だったわけですが、現代のような飽食の時代になりますと、 こうした体質は糖尿病や肥満を起こす悪玉体質とみなされるようになってしまいました。

ところでいわゆる 「生活習慣病」 として糖尿病、 高血圧症、高脂血症などの疾患に関する予防法や治療に関して現在新聞や雑誌などのメディアによって毎日のように数多く取り上げられていますが、これらの疾患はそれぞれ動脈硬化性を促進して心筋梗塞 (冠動脈疾患) や脳梗塞など致死性の高い疾患を導く因子と言われています。

近年、さらにその源流に位置する病態として注目されてきたのが 「肥満」 です。 現在のところ、 特に 「内臓脂肪」 が蓄積する肥満が、インスリンの作用不足と絡み合い、 さらに糖尿病、 高脂血症、 高血圧と広がって動脈硬化を進行させていくという説が有力とされています。そしてこれがとりもなおさず、 「メタボリックシンドローム」 の概念というわけです。

今回の講座では、 このメタボリックシンドロームという病態を念頭におきながら、 糖尿病について、 その歴史的な推移、 病態(インスリンができにくい、 効きにくい)、 疫学、 症状、 合併症 (神経障害、 網膜症、 腎症、 壊疽、 動脈硬化など)、 治療(食事療法、 運動療法、 経口薬療法、 インスリン注射療法) など全般について概説しました。

特に治療、 その中でも最も基本的な 「食事療法」について、 カロリー設定や、 栄養素分配などについて詳しく述べさせて頂き、 「糖尿病食」 は 「健康食」 であるということ、 また「糖尿病の発症・進展を予防する生活」 はそのまま 「健康人も見習うべき模範的生活」 であるということをご理解いただければ、本講座の目的はほぼ達せられたと申し上げて良いかと存じます。