仙台市医師会報2008.7 No.529より

大豊神社
哲学の道を南禅寺から銀閣寺に向かって北に進むと、観光地としてはさほど有名ではない「大豊(おおとよ)神社」があります。義父の名字と名前の一字をつなぐと「大豊」になるため、親近感からどうしても訪ねてみたくなり、桜の季節に行ってみました。この神社は東山三十六峰の一つ「椿ヶ峰」の山麓にあり、生い茂る木々によって作られる適度な日陰が「椿」の生育に適し、神社の境内には安達(あだち)、侘助(わびすけ)、黒椿(くろつばき)等、多種類の椿が初冬から初夏にかけて長期にわたり花をつけます。

この大豊神社は、平安中期の仁和3年(887年)、宇多天皇の病気平癒祈願のために、勅命を奉じ、医薬祖神の少彦名命(すくなひこなのみこと)を奉祀し創建されました。その後、学問の菅原道真公、勝運の応神天皇、七福の大国主命が合わせて祀られました。大国社には「古事記」の中に野火の危機から鼠が救った神話に基づく「狛鼠」が入り口にあり、「ねずみの社」として大豊神社のシンボルとなっています。社殿奥の右手に愛らしいねずみが2匹、ちょこんと座っています。右の鼠は酒の入った珠を抱え、長寿を表し、左の鼠は知識の象徴として巻物を持っています。さらに周りには狛鳶や狛猿などが祀られており、今風のアニマルキャラクターの寄り合い所のような雰囲気があります。御神徳として、医薬祖神による治病健康、福徳長寿、学業成就などがあり、まさに医師の氏神のようにも思われます。

医薬の神様に会いに立ち寄る社として、絶好の神社と思います。京都での学会の際に、時間がありましたら、お訪ねになってはいかがでしょうか。

山口克宏